ここ20年ほどで相続のもめごと、つまり「争続」は増加傾向にあります。
昭和63年、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件数は8058件でした。
その件数は増え続け、平成27年には12615件にまで及ぶものとなりました。
家庭裁判所にまでは持ち込まれずとも、弁護士などに相談があった争続も相当数あると考えると、残念ながら相続による家族間のもめ事は大幅な増加傾向にあると言えるでしょう。
時代の流れと争続増加の関係について
旧民法により、明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの間に旧民法によって施行されていたのが『家督相続』と呼ばれる遺産相続方法です。
これは被相続人である戸主が亡くなった場合、被相続人が有するすべての財産を含めた地位を嫡出長男が継承・相続するものでした。
つまり、戸主が亡くなった場合の財産を相続できるのは長男だけで、次男・三男・亡くなった人の配偶者には相続権はなく、その代わりに長男は他の家族に対する扶養の義務がありました。
このような状況では、誰がどのような財産を取得するかといった争続は起こりようがなかったのです。
この相続制度が、戦後まもない昭和23年の改正で、大きく変わりました。
多様化する家族の形と相続をめぐるトラブル
それまでの家督相続は廃止され、被相続人が有する財産に関する権利義務の承継を定める、遺産相続に一本化されたのです。
また、富が個人に集中しないよう、配偶者の相続権が認められると共に、長男以外の子どもも均等に相続ができるようになりました。
これにより、現行の民法では、遺言書がない場合には単独相続ではなく、共同相続が原則となりました。
ただし戦後しばらくのうちは、結婚した長男は両親と同居するなど、一軒の家に大家族が一緒に住んでいるという状態が一般的であったため、民法改正前の制度の名残も強く残っていました。
そのため、当時はまだ争続が社会問題として表面化することはありませんでした。
この改正により、相続財産は相続人の共有のものとなったわけですが、共有者が所有権を行使するためには他の相続人の同意を得なければ何もできない、という不都合も生まれることになりました。
これが問題として認識され始めたのは、1690年代の高度経済盛況が始まった頃からとなります。
経済成長によって働き方が大きく変わり、企業が地方へ支社を作るようになると、サラリーマンの転勤などといった理由から核家族化がどんどん進みました。
それぞれがそれぞれの生活を持つようになり、一家まるごと共同体という形が失われていくと同時、争続も増加し始めました。
近年では一生結婚せずに独身で終える人や結婚しても離婚してしまう人、子どもを作らない夫婦というように、家族の形がさまざまに変わってきています。
そんな時代の流れに法律が追いついていないため、相続をめぐるトラブルも多様化し、増大しているのです。
ふつうの家族ほどもめている
相続でもめるという話をすると、たいていの人は「お金持ちの家の話でしょ」と、まるで他人事になります。
実は、普通の家族ほど相続でもめているというのが、統計で明確になっているのです。
家庭裁判所が調停、審判した遺産分割事件の遺産額は、5000万円以下が70%以上をしめていて、そのうち約3分の1は1000万円以下となります。
つまり、億を超えるような高額な遺産を相続する場合よりも、相続税のかからない程度(参考:知っておきたい!相続税の基礎控除と2つの制度)の5000万円以下という遺産を相続する場合の方が、相続人の間でトラブルが起こりやすい、ということになります。
「うちの遺産なんか、たかが知れている。だから相続のトラブルは起こらない」という人ほど、争族になりかねないと、認識を改めなければいけません。
世の中には相続税対策の本が溢れていますが、お伝えしているとおり、相続税の申告をしなければならない人は日本全体で8%程度で、残りの約92%の家族には関係のないことです。
それよりも必要なのは、相続でもめ事が起こらないように対策をすることです。
実際にどのようなトラブルが起こりやすいのか、そのためにはどのような対策ができるのかを知ることが、争続を避けるために重要なこととなります。
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