不動産は金融資金と違い、きちんと分けることが難しい財産となります。
そのため、相続財産として自宅の土地と建物だけという不動産のみが残され、遺言書が準備されていない場合には今回ご紹介するようなトラブルへと繋がりやすくなります。
相続財産となる不動産の扱いに悩む相続人
Aさんの父親は、10年前に妻(Aさんの母)を亡くしてからというもの、一人暮らしを続けていました。
子どもであるAさんも、Aさんの弟も、実家から独立して生計を営んでいたからです。
普段から元気な父親でしたが、90歳を過ぎると寝込むことも多くなり、Aさんが仕事の休みのたびに様子を見に訪れた時には、以下のようなことを口癖のように発していました。
「いつ死んでもいい、遺言書は残さない。金も残さない。葬式は無用、それだけが俺からの遺言だ」
その父親が亡くなり、遺言通りに葬式も弟と2人だけで簡素に済ませました。
残った財産を調べてみたところ、預金通帳の残高はわずかに1,000円。相続財産は自宅の土地と建物だけ、という状態でした。
こういった状況であっても、遺言書が残されていない以上は、遺産分割の協議をしなければなりません。
Aさんは弟と話し合いました。
家を2つに分割することが出来ない以上、相続を分けるには家を売ってお金に変えなければいけません。
しかし、自分達が生まれ育った家をそう簡単に売っていいものか、Aさんは悩みました。
そこでAさんは、相続財産である実家に引っ越して住もうと考えていると弟に伝えました。
しかし、弟はその提案に強い反発を示したのです。
「相続財産を兄さんが独り占めするつもりか」と言う弟に「そうではない、お前には相当の金を渡すつもりでいる」ということも合わせて伝えましたが、金額をいくらにするつもりなのか提示できずにいると、弟は本当にお金をくれるつもりがあるのか、信用できない、あの家に住むなんて絶対認めない、と主張し続けました。
結局、しばらくは父親が残した家は父親の名義のまま放置し、2人の共有のものとする、という話になりました。
翌年のことです。Aさんのところに税務署から書類が送られてきました。
その内容は、父親の家の固定資産税の督促状でした。
2人の共有のものとした以上、Aさんは弟にも半分負担してもらおうと交渉しましたが、弟はそれを拒否し、しかたなくAさんが全額支払う形になりました。
不動産は分けることが出来ない財産。トラブルの原因になることも
このように、相続財産が預貯金のような金融資産であれば相続人の数に応じて分割することができますが、不動産はお金のようにきちんと分けることができない財産となり、そのため、相続トラブルの原因になることが多いです。
今回のケースでは、空き家としている実家を売って、そのお金を弟と2分の1ずつ分け合うのがもっとも現実的な解決策となります。
ただし、家の名義が父親のままでは家を売ることができないため、名義を変更しなければいけません。
また、Aさんがずっと実家に住みたいというのであれば家の名義を自分にすべきですが、弟の同意が必要となりますし、同意してくれたとしても、相続財産分としていくらお金を渡すべきなのか……といった問題が浮上します。
誰が何を相続するのか、遺言書で指定しましょう
財産といっても家と預貯金くらいしかない、こんなものは財産と呼べるような代物じゃない。だから遺言書も必要ない。
そんな風に考えている方がほとんどだと思います。
実際には、今回ご紹介したケースの他にも、遺言書があれば防ぐことが出来たさまざまな相続トラブルが発生しています。
遺言書の中ではっきりと、誰が何を相続するのかを指定しておくことが、遺された家族のためにも必要なのです。
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