遺言書の全文を遺言者が手書きで作成する自筆証書遺言書は、民法のルールに従って書くことが大切になります。
一般的な自筆証書遺言書の書き方のポイントと、注意点についてお伝えします。
書き方のポイントと注意点
1)指定の人物が特定できるようにする
遺言書内で指定した人物が確実に特定できるよう、続柄・氏名・生年月日を記入します。
氏名は戸籍謄本を見ながら正確に記入しましょう。
法定相続人以外を指定する場合は、住所も書いておきます。
2)相続と遺贈ははっきりと区別する
相続人に対して財産を与える場合、一般に「相続させる」「遺贈する」などの表現を使います。
正確には、法定相続人に対しては「相続させる」それ以外の人に対しては「遺贈する」と書きます。
特に不動作については「相続させる」と書かないと、あとで手続きが混乱することもあるため、注意しましょう。
3)不動産は登記どおりに記載する
不動産については、登記事項証明書(登記簿謄本)どおりに記載します。
所在・地番・地目・地積・家屋番号・種類・構造・床面積などを正確に記載しましょう。
4)指定の金融資産が特定できるようにする
銀行預金は、銀行名・支店名・口座番号・名義人などを預金口座が特定できるように明記します。
株式についても、会社名と株数を明記します。
5)すべての財産を記載する
遺言書に書かれていない財産の相続についても、誰にどうするか等を明記しておきましょう。
6)遺言執行者を記載する
遺言執行者は、遺言が効力を生じた際に遺言の内容を実現することを職務として、遺言により指定された者、または家庭裁判所に選任された者のことを言います。
遺言の内容を実現する際、相続人の誰が手続きをおこなうのかで調整が必要ですが、手続きに関する責任があいまいになってはいけません。
また、相続手続きは専門的な手続きが多いため、一般の人がおこなうには負担が大きすぎます。
そこで、こうした問題を解決するため、あらかじめ遺言書の中で遺言執行者を指定しておくと、遺された相続人の人たちは安心できるのです。
以下に遺言執行者を指定する際の記述例を記載いたします。
遺言者は、遺言執行者として次の者を指定する。
なお、遺言執行者がその業務に関して必要と認めたときは、第三者にその任務をおこなわせることができる。
住所
○○県○○市○○町○丁目○番地○号
氏名
一般社団法人○○○
遺言者は、本遺言の内容を実現するために次の権限を遺言執行者に付与し、その手続を履行させる。
1 遺言の調査・収集・管理(貸金庫の開扉・解約及び保護預かり契約の解約並びに内容物の引取を含む)
2 遺産の解約・換金並びに処分代金の管理・分配
3 その他本遺言を実現するために必要な一切の権限
遺言執行者の報酬は、金融資産〇〇○を取得する○○○に負担させる。
遺言執行者は破産者などを除き、基本的に誰でもなることができます。
誰にするか考えるときに気をつけることは「ボケない」「死なない」「潰れない」を第一に考えるということです。
遺言者よりも先に遺言執行者が亡くなってしまったり、認知症になってしまっては、代わりの遺言執行者を立てなければいけなくなり、スムーズに遺言を実行できなくなってしまいます。
そのため、できれば個人ではなく、法人化した団体がいいと言えます。
要は、自分がいつ死んでも、そのときに確実に遺言を実行できる人を選ぶことが大切です。
おすすめは、信託銀行や財産管理のコンサルティングをやっている社団法人です。
税理士や弁護士でも、個人ではなく税理士法人〇〇、〇〇弁護士事務所株式会社といった、法人化されているところを選びましょう。
こういった法人を探すのが難しいようであれば相続人である自分の子どもの誰かを遺言執行者に指定しておくのが無難です。
ただし、子どもなどの専門知識を持たない人を選ぶ場合は、先程の例に示したように実際の遺言実行は第三者に委任できる旨を記載しておくようにしましょう。
遺言執行者を指定する場合は、必ずその人の住所と氏名を記載しておきます。
法人の遺言執行者を指定した場合、遺言執行には当然費用がかかります。たとえば信託銀行に頼むと、最低でも100万円はかかります。
遺言執行者を指定する際は、必ず「指定の了解を得ること」「費用を確認すること」の2つが必須です。
また、その費用の負担は相続人の誰がするのか、それも遺言書に明記しておくといいでしょう。
遺言執行者の指定は、必ずしも遺言書に書くべき必須事項ではなりません。
しかし、遺言が効力を発した際の「認知」と「推定相続人の廃除・廃除の取り消し」は遺言執行者だけしかおこなえません。
また、遺贈や寄付行為の場合も遺言執行者を指定する必要があります。
遺言執行者の指定がなくても、相続人の誰かが遺言内容を実行すれば済むことです。
また、後から相続人が家庭裁判所に申請して遺言執行者を決めることもできます。
しかし、後々のトラブルを避けるためにも、遺言書の中に遺言執行者に関する記述は入れておいたほうが親切だと言えます。
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