前回までのコラムでは、すべての文章を自分で手書きする【自筆証書遺言書】の作り方をお伝えしてきました。
自分で用意する遺言書のため、費用は最低限まで抑えることができますが、形式に不備があると遺言書自体が無効となってしまう可能性があります。
今回お伝えするのは、自筆証書遺言書のマイナス点をすべてカバーする方法【公正証書遺言書】の作成方法です。
公正証書遺言書の作り方
公正証書遺言書は、公証役場の公証人が依頼人の求めに応じて作成する遺言書を示します。
公文書として保管されるため、安全で確実な遺言書と言えます。
公証人は公文書作成のプロなので、自筆証書遺言書にありがちな形式不備やミスが起こる心配がありません。作り方は以下の手順となります。
1.遺言内容の原案を作成する
正式な文書は公証人が作成するため、この時点では箇条書きのメモでかまいません。
2.証人を決める
公正証書遺言書の作成には、必ず二人以上の証人の立ち会いが必要となります。 遺言書の内容を知られるため、信頼のおける人物を選ぶことが大切です。
ただし、次の人は証人にはなれません。
・未成年者(20歳未満の未婚の者)
・推定相続人、受遺者およびその配偶者並びに直系血族(祖父母・父母・子・孫)
・公正証書を作成する公証人の配偶者、4親等内の親族、公証役場の関係者
3.公証役場への申し込み・打ち合わせ
まずは申し込みのため、公証役場に出向きます。この時、証人の同行は不要です。
遺言書の原案を伝えて、必要資料の確認などの打ち合わせをします。
特に問題がなければ、作成日の日時を決めます。作成日は証人の都合も考慮しましょう。
4.必要書類を揃える
公証人に指示された必要書類を準備します。おもに次のようなものとなります。
・遺言者の実印と印鑑証明書
・遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本、受遺者の住民票
・相続財産に不動産がある場合はその登記簿謄本、固定資産評価証明書
・相続財産目録(預貯金などは銀行名や口座番号などが必要)
・遺言執行者を指定する場合はその人の住民票
・証人の実印もしくは認印、本人確認のための印鑑証明書や住民票
5.作成日に遺言書を作成
作成日に証人と共に公証役場へ行きます。
遺言者が公証人の前で遺言したい内容を口述し、公証人がそれを筆記します。
公証人が遺言者と証人の前で筆記した内容を読み上げ、内容を確認後、遺言者・証人・公証人が署名押印すれば、遺言書の完成となります。
完成した遺言書は、原本を公証役場が保管し、正本と謄本を遺言者が持ち帰ります。
もし入院中などで公証役場へ出向くことができない場合は、公証人に病院や自宅に出張してもらうことができます。
公証役場と探し方と公正証書遺言書の作成費用
公正証書遺言書を作成する公証役場は、全国の市区町村にあります。
日本公証人連合会のホームページに公証役場一覧が載っているため、そこからあなたの家の近くの公証役場を探してください。
公正証書遺言書の作成自体は、必ず自分が住む地区の公証役場でおこなわなければいけないという決まりはないため、どこの公証役場で作成してもかまいません。
公証人の手数料は、遺言の対象となる財産の価額に応じて決まります。
また、病院や自宅に出張してもらった場合には、その分の手数料が上乗せとなります。
手数料は証書の作成料+遺言手数料(遺言加算)+出張費用で計算できます。
相続する人が複数の場合は、それぞれに手数料がかかります。
証書の作成費用
相続させる財産が100万円まで・・・5000円
相続させる財産が200万円まで・・・7000円
相続させる財産が500万円まで・・・1万1000円
相続させる財産が1000万円まで・・・1万7000円
相続させる財産が3000万円まで・・・2万3000円
相続させる財産が5000万円まで・・・2万9000円
1億円まで・・・4万3000円
3億円まで・・・5000万円ごとに1万3000円加算
10億円まで・・・5000万円ごとに1万1000円加算
10億円超・・・5000万円ごとに8000円加算
遺言手数料(遺言加算)
1億円以下のとき・・・1万1000円を加算
例)3000万円の財産を妻1人に相続させる遺言の場合、証書の作成2万3000円+遺言加算1万1000円=3万4000円の手数料
例)3000万円の財産を妻と長男にそれぞれ1500万円ずつ相続させる遺言の場合、証書の作成2万3000円+2万3000円+遺言加算1万1000円=5万7000円の手数料
出張してもらった場合は上記に加え日当2万円(4時間以内は1万円)、旅費(実費)、病床手数料(証書の作成料の2分の1を加算)が必要となります。
なお、手数料の他に、正本または謄本1枚につき250円がかかります。
自筆証書遺言書と公正証書遺言書それぞれの長所と留意点
紹介した2種類の遺言書の作り方は、それぞれ長所と留意点があります。
自筆証書遺言書は、遺言書を作ること自体には費用がかからず、書き換えが簡単にできるなど手軽さが長所と言えます。
留意すべき点は、自筆で用意する遺言書のため、形式の不備や内容が不明確であれば遺言書が無効となってしまう可能性があるという点です。
せっかく遺言書を作っても無効と判断されてしまえば、遺言書を残せたことにはなりません。
もし自筆証書遺言書を選ぶのであれば、必ず専門家のチェックをつけることをおすすめします。
また、自筆証書遺言書は管理が甘い場合には偽造されたり紛失や隠匿といった危険もあります。
原本をしっかりとした管理場所に保管し、念の為コピーを信頼できる人(親族や遺言執行者)に渡しておくといいでしょう。
また、自筆証書遺言書は勝手に開封することができません。家庭裁判所での「検認」には手間もコストもかかるため、相続人の誰かにきちんと伝えておくことも大切です。
公正証書遺言書は、自筆証書遺言書の留意点をすべてカバーしています。
公証人が作成する遺言書なので、無効になることはなく、公証役場で原本が保管されるため偽造・紛失・隠匿の心配もなく、作った遺言書が確実に執行されることがなによりの長所と言えるでしょう。
デメリットとしては、証人が必要であることと、手数料がかかることとなります。
作成の手続き上、証人に内容を公開しなければいけないため、遺言内容を誰にも知られないようにすることはできません。
基本的に証人は利害関係がある人以外がなるように規定されているので、漏洩するリスクは低いのですが、できれば友達や知り合いに頼むことは避けたほうがいいでしょう。
証人は弁護士や司法書士などの専門家に頼むことができますが、通常は5000円~1万円ほどかかります。
ただし、弊社がそうであるように、相続全般をコンサルティングしているところに依頼すると、証人2名は無料で用意してくれるところもあります。
このように、公正証書遺言書はしっかりとした遺言書を作ることができる代わりに、手数料を含め多少のお金が出ていくことになりますが、これは必要経費と考えるしかありません。
この2つを比較したうえで、遺言書を作るのであれば、公正証書遺言書を作ることをおすすめしています。
自分でできることは自分でやって、プロに頼むことはプロに頼む。
すべて丸投げするのではなく、最低限のことはご自身で勉強したうえで、安心・確実な遺言書を作成いたしましょう。
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