ー目次ー
1. 相続人を特定する
2. 財産を特定する
3. 相続税を算出する
4. 遺産分割の協議を行う
5. 相続手続きを行う
6. よくあるご質問
〇相続手続き内容とスケジュール
1. 相続人を特定する
遺言書がない場合には、相続人全員による財産の配分を同意する必要があります。第一には、その相続人を特定する必要があります。
相続人は、民法で下記のとおり規定されています。
配偶者は、常に相続人
次に、相続人の順位が決められてます。各順位の相続人がおられる場合は、その順位より次の順位のかたは、相続人にはなりません。
第一順位 子
第二順位 直系尊属(亡くなられた方の両親)
第三順位 兄弟姉妹
尚、相続人となるはずであった子または兄弟姉妹が、亡くなった方(被相続人)より先に死亡している場合や、相続権を失った場合(相続欠格、推定相続人の廃除)は、そのものに代わって相続人となります。これを代襲相続といいます。
子の代襲相続は孫と無制限に下がります。兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪までになります。
相続人を特定する方法は、被相続人の出生から亡くなったときまでの連続した戸籍を取寄せて確認します。
出生の戸籍は、被相続人の両親の戸籍により確認します。
その後、結婚などで、被相続人が戸主になる戸籍ができます。
その戸籍により、配偶者を確認できます。
また、子ができると、被相続人の戸籍に入籍されます。これにより、子が相続人であることが確認できます。
子が結婚すれば、被相続人の戸籍から抜けますので、新たにできた子の戸籍を取寄せ相続人である子の状況を確認します。
既に、子が死亡している場合などは、子の戸籍で確認できます。このように、出生から死亡までの連続した戸籍を取寄せることにより、相続人が確認できます。
気を付けることは、戸籍は、戸籍法の改正よりその都度新しくなります。
その際、既に戸籍から抜けているいるもの(子:結婚等、配偶者:離婚等)は、記載されませんので、法律改正前の戸籍(改正原戸籍)を取寄せて確認する必要があります。
〔戸籍の取寄せ方法〕
被相続人の本籍地の役所に取寄せを依頼することになります。
住民票の届け出ている役所と本籍地が異なる場合が多くありますが、その場合は、本籍地の役所に請求します。
取寄せは、郵送でも対応してくれますので、直接、その役所に連絡し、請求手続きをご確認ください。
支払いは、郵便小為替を購入に費用分を送付し行います。
〔法定相続情報証明制度〕
本年(2018年)5月29日から、全国の法務局(登記所)において、各種相続手続に利用できる「法定相続情報証明制度」がスタートしました。
法定相続情報証明制度は,法務局(登記所)に被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍一式を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。
その後の相続手続は,「法定相続情報一覧図」の写しを利用することで,戸籍等の束を何度も出し直す必要がなくなります。
法定相続情報一覧図_法務局のHPより抜粋
(ワンポイントアドバイス)
戸籍の取寄せは、大変手間がかかる作業です。
被相続人が、出生から死亡まで同じ本籍地の場合は、ひとつの役所ですべてそろえることができますが、結婚等で本籍地が変わっている場合は複数の役所に請求することになりますので、注意が必要です。
また、連続した戸籍が必要になりますが、途中が抜けているケースも散見されます。
特に、古い戸籍では、住所が昔の住所になっていることから、市町村合併等で現在はなくなっている市町村もあり、当該住所が現在どこの役所に区割りされたのかなどを確認する必要があります。
私どもでは、基本的に、戸籍の取寄せは、その手続きに精通した司法書士をご紹介しております。
多少費用はかかりますが、相続人が苦労して取寄せるより、確実に取寄せられることになります。
戸籍は、相続手続きには必ず必要になることから、間違いないものを取寄せましょう。
2. 財産を特定する
相続人の財産を特定するには、下記のとおり各種の書類により確認します。
不動産
固定資産税納付書に添付されている「固定資産課税明細書」でまず確認できます。
但し、所有権はもっているものの、道路などに指定されて固定資産税が非課税となっているもの、共有名義になっているものは、明細書に記載されていない場合があります。
確実に被相続人の不動産を確認するには、市役所に「固定資産税評価証明書」を請求しその内容で確認します。
不動産の相続登記をする際には、この証明書が必要になることから、必ず必要な書類になります。
金融資産
・銀行預金
被相続人の通帳やキャッシュカードから、取引銀行を確認します。
それらが見当たらなければ、定期的に送付される残高移動明細や取引連絡票などから、取引銀行を推定します。
預金残高などの詳細な内容については、銀行宛に「残高証明書」の発行を依頼し、その証明書で内容を確認します。
銀行では、相続人であることが戸籍等で証明できれば、証明書は発行してくれます。
但し、銀行では、残高情報などが共有されていないことから、個別に取引があったと思われる銀行に問い合わせる必要があります。
全ての銀行に取引確認をすることは現実的ではないことから、ある程度の資料をもとに推測し確認する必要があります。
・有価証券
株式、投資信託などは、証券会社等から、「預り証」が発行されます。
また、決算報告、株主総会招集通知なで定期的に投資家に送付される書類がありますので、その書類で確認することも可能です。
・生命保険
生命保険の加入者には、「保険証券」が発行されます。
この証券には、契約者、受取人、保険金額などが記載されていることから、その内容で確認します。
・その他
ゴルフ会員権やリゾート会員権などは、会員証が発行されていることから、その内容を特定します。
(ワンポイントアドバイス)
金融機関の取引は、前述のとおり、個別に確認しなければなりません。
確認できなければ、相続手続きから漏れることになります。
引っ越しを繰り返し、以前の住所地近くの銀行取引などを漏らしてしまうケースもあります。このような場合は、どうしようもありません。
また、最近では、ネットバンク、ネット証券がかなり普及してきました。これらは、ネット上だけで取引を行いことから、被相続人しか知らず、相続人に特定できない場合があります。
私どもでは、多くの経験から、財産の特定についても、そのノウハウがございますので、是非、ご相談いただきたいと思います。
3. 相続税を算出する
(1) 財産の評価
① 不動産
A. 土地 路線価 若しくは 倍率評価
国税庁のHP http://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm で確認できます。
・路線価
市街化地域であれば、土地に接している道路に評価基準額(㎡単位)が付けられています。
その評価基準額に土地の面積(㎡)を掛けることにより、土地の評価額が算出されます。
但し、土地の形状によって、補正することになりますので、詳細は、お問合せください。
・倍率方式
路線価がないところでは、「倍率方式」により算出します。
固定資産税評価額に対して土地の用途(住居、田、畑等)により、倍率が設定されていますので、その倍率を掛けて評価額を算出します。
B. 建物 固定資産税評価額
②金融資産
A.預金 元金+経過利息
B.有価証券 上場株式の場合 下記4つのなかで一番低い価額
死亡日の終値、
死亡月の毎日の終値の平均値、
死亡月前月の毎日の終値の平均値
死亡月前々月の毎日の終値の平均値
C.生命保険 保険金額
③その他資産
A.金 田中貴金属等取引業者発表の価格
B.ゴルフ会員権 会員権取引業者発表の売値と買値の中間値
(ワンポイントアドバイス)
相続税における財産評価は、必ず専門家にお問合せ、ご確認ください。個別資産の評価は、相続税法にそって詳細に行わなければならないことはもちろんのこと、各種特例(小規模宅地の特例等)についても複雑な要件があることから、個人での判断はお勧めしません。
評価方法の違いで、払う必要のない相続税を支払っているケースも見受けられます。相続に強い税理士は多くはいないのが現実です。
是非、私どもにご相談ください。
(2) 基礎控除
基礎控除とは、相続税がかからない金額のことをいいます。
相続財産が、この基礎控除の金額以下であれば、相続税はかかりません。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
昨年の年間死亡者のうち、相続税を支払ったかたの割合は、8%程度です。つまり100人中8人程度が相続税を払ったことになります。
基本的に、一般のかたは、相続税は支払う必要はないと考えますが、相続税は、相続発生の日から10か月以内に現金で支払うことになっております。
相続税がかかるかたは、そのスケジュール内に現金を用意する必要があることから、相続税がかかる場合は、注意する必要があります。
4. 遺産分割の協議を行う
(1) 財産の配分について相続人間で話し合う
遺言書がない場合は、相続人全員により遺産の分割内容について合意する必要があります。
具体的には、遺産である不動産、金融資産等を相続人の誰が、何を相続するかを決めることです。
相続財産の分割方法には、下記の4つがあります。
①現物分割
不動産、預金、株式などをそれぞれの相続人に現物で相続させるものです。
具体的には、自宅不動産は、配偶者、◯◯銀行の預金は、長男、◇◇銀行の預金は、次男、株式は、均等な株数で長男、次男が相続するというように分けます。
②共有分割
相続人間で一定の割合を決めその割合で相続させるものです。
具体的には、自宅不動産を、配偶者1/2、長男1/4、次男1/4という割合で相続するというに分けます。
但し、不動産を共有とした場合は、その不動産を売却する際は、全員の同意が必要になることから、その売却価格等で合意に至らず、売却が不可能となるケースがあります。
また、相続したものが死亡した際は、相続人が権利を継承しますが、権利関係者が増え、更に売却等の処分が困難になります。
原則、不動産の共有での相続は避けることをお勧めします。
③ 換価分割
相続財産を売却し、現金にして相続人に分配するものです。
不動産の売却は、売却価格について相続人の合意が必要となりますし、売却時の税金についても考慮し、分配額を算出しなければなりません。この税金を考慮していなければ、想定よりも少ない分配になってしまいます。
④ 代償分割
相続人のうちのひとり若しくは一部の相続人が、財産を相続し、他の相続人には、分割相当の現金を渡すもの。
具体的には、自宅不動産を長男が相続し、その評価の半額を長男から次男に現金を渡し清算するという方法です。
不動産の売却、共有を避ける際に使われる手法で、多く活用されています。
遺産分割の協議が纏まらない場合は、家庭裁判所に調停・審判という手続きにより、調整を依頼することになります。
これが所謂“争族”と言われるものです。
家庭裁判所では、双方の主張を聞くものの、最終的には、法定相続割合をベースとした分割で決着するよう指示・調整が行われます。
それでも調整がつかない場合は、裁判で争うことになります。
ちなみに、介護等の負担に対する貢献を相続分に上乗せするような主張は、実際のところは、なかなか通りません。
このように相続に関して相続人の合意が至らず、遺産分割協議が決裂するような状況では、代理人として弁護士をお願いする場合があります。
私どもでは、相続に強い弁護士と提携しておりますので、このような場合には、ご紹介することは可能です。
(2) 遺産分割協議書の作成
遺産に関わる分割の協議で相続人全員が合意されたら、それを証する書類を作成します。
これが「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議書の(例)を記載いたします。
この書類は、相続手続きに必ず必要になりますので、分割協議が整えば速やかに作成しましょう。
遺産分割協議書には、相続人全員の署名、捺印が必要になります。
相続人本人の合意であることを示すために、印鑑証明書を添付しておきます。
〔遺産分割協議書 例〕
5. 相続手続き
遺産分割協議書が整えば、次は、その内容に沿った相続の手続きが行えるよういなります。
(1) 不動産
相続する相続人の名義に変更する相続登記を行います。
不動産の所在地を管轄する法務局に申請をします。
相続人自身でも登記は可能ですが、煩雑な書類作成、準備が必要になることから、専門家である司法書士へ委任することをお勧めします。
私道部分の相続登記がなされていないことなど登記漏れも時々ありますので、所有不動産の確認には万全を期す必要があります。
相続登記には、相続人であることを証明する戸籍一式、若しくは「相続情報証明書」、遺産分割協議書などの書類が必要になりますが、司法書士に委任するには、委任状が必要となります。司法書士から必要書類の提示を受け手続きを進めれば漏れなく手続きができます。
相続登記の費用は、
①相続登記にかかる税金(登録免許税)と、司法書士に依頼する場合は、②司法書士への手数料が必要となります。
①は、固定資産税評価額に、土地は、3/1000、建物は、4/1000を乗じた金額となります。
②の相場は、5〜10万円程度です。当協会では、相続に精通したリーズナブルな料金で対応する司法書士と提携することにより、相続登記のお手伝いを行なっております。
(2) 預貯金
金融機関によって必要書類は異なりますが、基本的には、相続人を証明する戸籍一式、若しくは「相続情報証明書」、「遺産分割協議書」の提出が求められます。
遺産分割協議書に代わるものとして、銀行独自の「遺産分割協議書類」が用意されていますので、その書類に相続人全員の署名、捺印をします。
印鑑証明書の提示を行えば、相続人への名義変更若しくは解約・換金が可能となります。
(3) 株式
証券会社によって必要書類は異なりますが、基本的には、相続人を証明する戸籍一式、若しくは「相続情報証明書」、「遺産分割協議書」の提出が求められます。遺産分割協議書に代わるものとして、証券会社独自の「遺産分割協議書類」が用意されていますので、その書類に相続人全員の署名、捺印をします。
印鑑証明書の提示を行えば、相続人への名義変更が可能となります。
単位株数(発行会社によって1000株や100株と様々です)であれば、名義変更は可能ですが、単位株数以下の端株は、現金化される手続きとなります。
(ワンポイントアドバイス)
当協会では、「相続手続支援サービス」をご提供しております。
上述のとおり相続手続きは、相続に精通した知識と実務的な対応力が必要です。
基本的に、相続人自身で行うことは可能ですが、必要書類も多く、また、煩雑な手続きですので、一括してお任せいただくことをお勧めいたします。
6.よくあるご質問
Q1 相続手続に期限はありますか?
A1 相続手続には、期限はありません。
相続税の申告は、相続が発生し10か月を期限に行う必要があります。
よくこの相続税の申告期限と相続手続の期限を混同して認識されているかたがおられますが、相続手続は、決められた期限はありません。
しかしながら、相続手続は、ある程度の期間で行わなければ、預金等は相続人が利用できませんし、不動産は、相続登記しなければ売却できません。
特に、売却予定のない不動産は、相続手続を未了のケースは多くそのままの状態(亡くなったかたの名義のまま)になっています。
時間の経過とともに、相続人が死亡し、更なる相続が発生し、関係者が多くなってしまい、実際売却をしようとしたときには、相続手続が長期化し、売却できなかったということも耳にします。相続手続は、相続発生後速やかに行うことをお勧めいたします。
Q2 銀行に、相続発生の事実を伝えると「預金凍結」されてしまいます。相続発生を伝えずに、キャッシュカードで被相続人の預金を下ろすことは問題でしょうか?
A1 銀行には、「善管注意義務」という義務が課せられています。
これは、善良な管理者として顧客の財産を管理するという義務です。
この観点から、銀行が、預金者の死亡を伝えられると、相続人間の争いに繋がらないよう預金の異動をできないようにします。
これが所謂「預金の凍結」です。
よく「銀行は、ネットワークで繋がっていて、預金者が死亡すればその情報が一斉に伝わり預金が凍結されるのですか?」と聞かれます。
回答は、「そのようなネットワークはありません。
銀行は独自に死亡情報を入手し、その情報をもとに預金凍結等の対応を行います。」です。
つまり、死亡の事実を相続人等が伝えない限り銀行が預金凍結等の措置を行うことはありません(但し、新聞等の報道で死亡の事実を知る。
銀行の外報員(外回り)が葬儀等の情報を知るなどで、銀行が死亡の事実を把握することはあります)。
従って、預金者の死亡を伝えず、キャッシュカードで預金を下ろすことは可能です(暗証番号を知っていることが前提となりますが)。
このこと自体で罰せられることはありませんが、一部の相続人のみで、被相続人の預金を払い出し、利用することで、他の相続人からクレームを受けることになる可能性はあります。
よって、できる限りこのようなことは行わず、税式な相続手続を経て払い出すことをお勧めします。
Q3 「名義預金」とは何ですか?
A3 被相続人の預金であるにもかかわらず、被相続人以外の名義になっている預金のことをいいます。
夫が稼いだお金を、「いつもありがとう。今月の生活費です。よろしくね!」と妻に渡すことは多くの家庭で起こっていることだと思います。
妻は、その中から倹約し少しずつ預金を積み立てます。
これを妻の名義の預金にするとこれが、名義預金となります。
もともとこのお金は夫の財産の一部ですので、名前だけが妻になっている夫の財産ということになります。従って、夫が亡くなった際の相続財産として計上すべきものとなります。
このことを奥様にお話しますと「納得いかない!」とよく言われます。
相続税では、「配偶者控除」といって、配偶者には、法定相続割合もしくは1億6千万円のどちらか大きい金額までは、相続税がかからない控除額が設定されています。
これは、夫の財産形成には、妻の協力があったからこそであり、その貢献分についての控除です。所謂「内助の功」を認めています。従って、妻名義になっている預金も、夫の相続財産に計上し、その預金は妻が相続するという流れが正式な手続きになります。
この名義預金を申告しなかったために、相続税の申告漏れ、追徴課税等の支払いを求められるということが、実際には多く起こっている申告漏れのケースです。
ちょっとしたことですが、注意していただきたいと思います。
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